エンジニアリングとお金の話

都内で働くエンジニアの日記です。

【感想】中島聡氏の討論会に行ってきた

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今年は色々な技術系の勉強会に参加しようと思っている。その第一弾として、中島聡氏の討論会に行ってきた。

中島聡氏は『Windows95/98』、そして『Internet Explore3.0/4.0』のチーフアーキテクトを勤めた技術者である。自分は中島氏が書いているブログLife is Beautifulを愛読しており、是非会ってみたいと思っていた技術者の一人であった。

今回参加したイベントは、中島氏の新書『エンジニアの生き方』の出版記念イベントで、若手エンジニアの今後のキャリアプランや有り方について、中島氏と100人のエンジニア間で討論しようと言う趣旨の内容だった。その中で以下3つの事が印象に残ったのでメモしておく。

 

1.マイクロソフトでの人材の評価方法

中島氏が在籍していたマイクロソフトでは人材を評価するにあたり、各チームのリーダーがチームメンバー対して順位を付けて決めて行くとの事。なお、順位を決める際の基準については、自分が会社を辞める際に一番目に連れて行きたい人材、二番目に連れて行きたい人材、三番目に・・・と言う様に 自分が連れて行きたい人材は誰かと言う基準によって決めて行くとの事であった。

人を評価する事は本当に難しい事だと思う。その際の判断基準を『自分が連れて行きたい人材は誰か?』という事で考えるのは、一つの判断基準として有効な考え方だなと感じた。

また、マイクロソフトでは、各メンバーに対して順位を定期的に伝えるとの事であった。自分の会社では上期と下期の年2回評価を下される事となっているが、正直納得の行かない評価である事が多い(頑張ったのに悪い評価の時もあれば、たいして頑張ってないのに良い評価の時がある)。

透明性と納得感を増す為にも、現在の評価を定期的にメンバーに伝える事は、是非自分の会社にも取り入れて欲しいと思った。評価の不満は、予め上司と部下の間で情報共有を行えていれば、発生を防ぐ事が出来るのでは無いかと思う。

 

2.アメリカにも受託開発の会社は存在する

アメリカのIT企業は大きく2つに分かれるとの事。ひとつはGoogleFaceBookに代表される様に自社のサービス、アプリで勝負をしている企業。もうひとつは、日本のSierの様に顧客要件を聞き、企業のシステムを構築し人月ビジネスで生計を立てている企業(アクセンチュア等)である。

自分はアメリカのIT企業は、全てGoogleの様に自社サービスか、Oracleの様に自社パッケージでビジネスを展開している物だと思っていた。なので、アメリカにも日本のSierの様な働き方をしている企業があると言う事について初めて知った。

ただ、日本のSierとは決定的に違う点があり、それは下請けの会社を使わず、全て自社の人間で設計・開発を行うとの事であった。プロジェクトが立ち上がり、人が必要になったら、自社で雇い入れ、設計・開発を行う。日本のSireの様な、プライムベンダーが設計し、その設計を下請け会社が開発する言う様なピラミッド構造は無いとこの事であった。

アメリカの雇用環境と日本の雇用環境との違い(人員整理が容易か難しいか)もあると思うが、自分も日本のSierの様なピラミッド構造については疑問に感じる事がある。そもそも、設計と開発を引き剥がして物を作る事が正しいのだろうか。IT技術の進歩は目まぐるしい物がある。そのスピードについていく為には、今後日本でも設計から開発まで自社で一貫してやる必要があるのでは無いかと思う。

 

 3.どんなに大きなシステムでも最初は一人で行うべき

中島氏への質問で、特許庁のプロジェクトが失敗した理由についてどの様に考えるか?と言う質問があった。その質問に対しての中島氏の回答は、『最初に多くの人を投入するから』との事であった。中島氏いわく、どんなに大きなシステムであっても、最初は一人で開発を行うべきであり、一人で1~2ヶ月やればどの様なシステムでもある程度の形は出来るとの事だった。人を入れるのは、ある程度方向性が固まってから。最初から、多くの人で走り出すと、行き詰った時に後戻り出来なくなり、プロジェクトの破綻へ繋がるとの事であった。

自分も開発を行っていて思うのだが、システム開発は人を沢山集めれば良いシステムが出来ると言う物では無い。システム開発は自分の中のイメージとしては、1枚の絵を描くのと似ている。みんなが個別に描きたい部分を描いても、ちぐはぐな絵が生まれるだけである。バランスの取れた素敵な絵を描く為には、一人が頑張ってある程度の形を作る必要があると思う。

自分の考えが中島氏の回答と同じであった事を受けて、自分のやり方に自信を持つ事が出来た。今後もシステムの柱を作るのが自分の役目であると言う事を認識し、技術力を高めて行きたいと思った。

 

今回の討論会は、中島氏の色々な知識を得ることが出来て本当に参加して良かった。また、他の同世代のエンジニアの考えに触れる事が出来たのも大きな収穫であった。今年は月1回ペースでこの様なイベントに参加する様にして行きたい。